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<プレスリリース> 小中規模木質バイオマス熱電併給事業開始→地域ぐるみでの展開へ

2021.11.04

紫波グリーンエネルギー株式会社(代表取締役:山口 勝洋)は、このたび「地域ぐるみ小中規模木質バイオマス熱電併給事業」を開始し、「紫波郡・石鳥谷」シリーズとして地域ぐるみで展開していきます。以下の目標数の複数案件を順次進め、並行して適したチップの製造や、間伐材の買取等のインフラを整備していきます。

【R3年度開始】小規模2件(老人福祉施設)にて木質の熱供給を開始。

・木質ガス化熱電併給とチップボイラの組合せシステムを確立し、重油約9万ℓ/年の消費を9割以上置き換えていく。

【R4〜6年度目標】小規模3件追加と中規模1件(温浴施設、食品加工、老健施設等)へ木質の熱供給を展開。

・コスト低減を進めながら地域内に導入を進め、一定の経済規模を確保しつつ、適したチップの製造設備を稼働する。

経緯: 当社は標記事業案につき地域の関係者各位とH30年8〜12月に「推進検討会」を行って以来、その実現に向け動きを積み上げてまいりました。今後の時代に向けた良い取組とのことでご理解を頂き、R元年には1件目の熱利用顧客となる特別養護老人ホーム 百寿の郷(社会福祉法人 志和大樹会 理事長 細川 博明)と契約しました。以来、設計や設備の導入、試験的熱供給(3月)を経て、本年7月より売電の連続運転を始めました。現在もより高い設備利用率と冬に向かい増加する熱需要への対応のため、改善改修を重ねています。

脱炭素: 百寿の郷では概ね9万ℓ/年の重油を暖房・給湯・風呂昇温のためにボイラで焚いてきました。それら熱需要に対して木質由来の熱を供給し、9割以上の重油を置き換える事を目指しています。折しも、気候の極端化は岩手でも世界各地でも顕著となり、対策は急務です。温暖化ガスの排出0は国や国際的にも公約となりました。地域の事業所という分散した場所での石油消費を、それぞれの現場で(ほぼ)0にしていく事業です。

ユーザー負担正味0: 本事業はエネルギーサービス(ESCo型)の契約形態としており、熱ユーザーは長期の熱利用契約をするだけで、木質熱に変えられます。初期投資の資金負担、技術リスクや運用メンテナンスの実務・費用負担は当社が行います。熱ユーザーは、従来の重灯油の購入費用の支払先を変えるだけで、正味負担は増えない価格設定としています。今の石油を焚き続けている状況を、良くない事だからやめよう、という気持ちだけで、金銭的負担なく脱炭素ができます。当社は20年間の東北電力への売電契約と熱供給契約を併せて、長期の融資返済を賄います。

 地域ぐるみ: 複数案件をシリーズで行う本事業は、木質など再エネ熱の普及につなげる、以下3つの特長があります。1)初期費用低減、2)地域工事チームのノウハウ蓄積、3)チップ製造・木材買取のインフラ整備。

  1. 日本では木質バイオマスの機器・工事費が高く(欧州の2.5〜3倍)、普及が進んでいません。本事業では初めの件での反省を次以降の件では活かす事ができ、コストダウンの機会が生まれています。
  2. 趣旨に賛同する地域内の工事会社(電気・管・建屋など)とは協力チームとして、コストダウンと共にノウハウの蓄積を図ります。
  3. 木質ガス化に適したチッパーの初期投資は、複数案件の一定経済規模により、投資回収が図れます。また地域の間伐材等の買取インフラとなり、間伐等の森林整備に入ろうという人を促します。

熱利用のための技術と規模: 本事業で採用する小中規模の技術及び組合せシステムは、以下3つの特長があります。4)高い総合エネルギー効率、5)有効に消費できる熱発生規模、6)地域身の丈の木材利用量。

  • 木質ガス化・ガスエンジン技術は、木質の投入エネルギーの内、電気になるのは2〜3割、加えて熱として6割弱、併せて8〜9割が有効に活用されます。本事業ではもう一つの熱源としてチップボイラを使い、9割台の木質エネルギーが有効な熱となります。
  • 小規模案件で40〜50kWの発電規模から同時発生する熱出力は100kW前後で、熱需要の規模に見合います(夏のみ多少余る)。
  • 本事業シリーズで計画する小規模5件+中規模1件の熱電併給では、木材の利用量は約5千3百t/年〜程度であり、地域内の間伐材等で賄えます。(大規模発電所の1/15以下などの規模)

近年木質バイオマスの利用は、再エネ電気の固定価格買取制度(FIT)に乗った大規模発電(蒸気タービン、5,000kW以上など)が盛んに作られ、大量の木材(8万t/年〜など)が広域的に集められ20年間消費される構造となりました。輸入資材を大半の燃料とする大規模発電所も多く、持続可能性に疑問が投げかけられています。それら蒸気タービンは木質の投入エネルギーの2〜3割を電気にしますが、同時に大量に発生する7割強の熱は、大気に大量に捨てざるをえない技術です。熱発生量も13,000kW〜などと桁が大きすぎて、見合う熱利用者は地域に見出せません。本事業ではそれら反省を踏まえ、対極的に持続可能な方法で、且つ経済的に成り立つ事業を、日本初で築いていきます。 様々な意義を持って、これから本格展開をしていく本事業へは、当社は使命として取り組んでまいります。何卒、これまで以上のご支援・ご協力を賜れますようお願い申し上げます。

【地域ぐるみ 小中規模 熱電併給/熱利用 事業展開イメージ図】

【熱電併給/熱利用の設備構成 イメージ図】